バニーガール

昭和45年、田舎育ちの私がS化粧品会社に入社しました。

 
給料が高かったのと絵が好きだったので、化粧も絵を描くこと同じととらえ、進路を決めたのです。
そんな私が、会社の教育実習を終えて配属されたのがすすき野にある一番取引の多いチェーンストアでした。
 
当時のすすき野は午後6時ともなると人々が波の様に押し寄せ、帰宅するのに難儀しました。
人混みをかき分けてかき分けて、やっと電車乗り場に辿り着く日々。
スカウトマンが、電車の中まで追いかけて来る日もありましたね。
 
そんな中で化粧品売場に隣接するビルの階段付近に、退勤時間が間近になると決まってバニーガールが姿を現しました。
 
全身が黒の衣装で、今で言うオリンピック選手が身に付けるような水着姿、短めのジャケットを羽織り、ネットストッキングを付け、お尻には白の野球ボール程のボンボリ。
頭には白のウサギの耳を付けていました!
 
ウヮー!、こんな格好で出歩いている!
初めて見る世界。
私には童話の中に迷い込んだ、そんな感覚でした。
 
バニーガール姿の若く綺麗なお姉さんは、夏は良いのですが冬場も同じ姿でしたから、師走は特にお尻が寒そう
蒼ざめ、時々小刻みに震えていました。
 
彼女は時々その姿のまま化粧品を買いに店内に入ってきましたが、当初はどこか恥ずかしそうに俯いていました。
でも半年もすると慣れたのでしょうか、平然としてどこか誇っている様にも感じられました。
今ならコスプレというところでしょうか。
それともハローウィンの仮装かな?
 
水商売の厳しさでしょうね。
その時代、女同士の取っ組み合いを、遅い昼食をとりに入った喫茶店で初めて目にしました。
お客さんの取り合いとか。
気勢を上げて髪の毛のむしりあい!ブラウスの胸がはだけボタンが飛ぶ、凄まじいものでした!
まるでプロレス!?観覧料無しで見させていただきました。
 
日が暮れるとグリーンビルに設置されている、ニッカーウイスキーのステンドガラスの小父さんが、ひと際華やかさをもたらしていました。
 
すすき野には酒とタバコと女と、人々の熱気が漂う別世界が広がっていました。
楽しかったです!