馬鹿な私

暖かな秋日和ですね。
こんな日は忘れられない思い出の一つが顔をだします。

子供の頃、そう小学4、5年の頃、でしょうか。

近所に一つ年上の幼馴染の、かわいい女の子(Sちゃん)がいました。
 
Sちゃんはお姉さんで、私は、彼女のまねをすることもあったと思います。
「私は、馬鹿なんだー」
Sちゃんは、なにかにつけてこの言葉を発していました。
 
気に入りました!
私は、その頃たぶんアンデルセンの童話に夢中だった、と思われます。
言われた手伝い、学校。
私には、時間がない!
 
本に夢中の私は、人と話すのもおっくうだった。
そこで飛びついたのが
「私は、馬鹿なんだー。」
だった。
 
何を聞かれても本に夢中の私は、上の空。
他人とコミュニケーションとるのもおっくう。
 
そこで何かにつけて
「私は、馬鹿なんだー。」
を、連発。
この言葉は実に都合がよかった。
 
しばらくして、少し離れた伯母の家に使いに出された時も
この言葉で、すませた。
呆れた様な顔をして、たしなめられたような気もしたが、気にもならなかった。
心、ここにあらずだった。
 
だが帰宅して二、三日後、この言葉は禁句となった。
伯母からの通報で母に知られたのだ!
「お前は、自分が馬鹿だって皆に言って歩いてるんだって?!
そんな馬鹿な子供、見たことないよ!本当に!大馬鹿者だね!」
母は眉をよせ、目は鋭く光り私を睨みつけている。
 
滅多に𠮟られたことのない私は、憮然とした。
(Sちゃんだって、言ってるよ!)
そう思いながら。
すぐさま母の言葉がおいうちをかけてきた。
「お前は、人になんだ、かんだ言われると腹が立つんだろう?!
それなら、人に言われない自分になりなさい!」
 
お母さん、お見事でしたよ。