寝言

3人の姉はすでに嫁いで、屋根裏部屋は4番目の姉と私の2人だけだった。

春先とは言え、雪解けは始まったばかりの三月の終わり頃だったろう。
どういうわけか、4番目の姉が雪に埋もれた木々の間をくぐり抜けて山を登って行くのです。
私は、長靴が雪にぬかってなかなか姉に追いつけず、
必死に追いかけている。
(ダメよ!そんな事をしたら。そんな所に行ったら死んでしまうわ!)
私は、気がせき、止めたい一心で喉がカラカラ。
体中が火照り汗ばんできた!
 
ふと、(これは夢かもしれない。)
そんな思いが胸を横切った。
姉がこんな事をするわけがない!
でも、これが本当だったら、私は後で後悔することになるわ!
もし、これで姉が死んでしまったら、後悔して一生を過ごすことになるわ!
それだけはイヤダ!
どうしよう!?
違っていたら、家族皆に笑われる!
 
でもいい!
後悔するよりは。止めよう!
私は、叫んでいた!
声が家中に響きわたる。
「ふみちゃーん!」(行ってはダメよ!)
できる限りの大声を張り上げていた!
瞬時に私は、自分の声で目覚めた!
夢だったのだ。
 
朝、バツが悪かったが、階下に降りていく。
「昨夜、m子!寝ぼけたんでしょ!」
と、朝食の支度にガス台に向かっていた母が言った。
台所にいた姉、兄、それぞれが、(高校生にもなって)と、言いたげに笑いをこらえて私を見ている。
顔を赤らめ恥ずかしがっている私を見ると、3人はクスクス笑い出した。
 
イヤダー。逃げ出したい気分だった。
でも、後悔はしていなかった。
 
今もこの件に関してのいきさつは、家族の誰にも話していない。