もう、家にはお金が無いよ

結婚して一年半、私は、それまで深く考える事もなく生活していました。
 
パートナーから渡されたお金で買い物をし、彼の好きなもので料理を作った。
只々、私の育った庶民生活との違いを肌で感じる事ばかり。
 
50年前のハムは高級品だったし、私の好きな巨峰もメロンも高級品だったが、それらを食べたい時は躊躇せずに食卓にのせられた。
 
彼は魚肉ソーセージは、好きではないらしかった。
ジャガイモやカボチャは特に嫌いだった。
(戦争中を思い出すから嫌だ!)と言うのです。
 
魚は、サケは別として白身魚以外は食べなかった。
(食べた事が無かったので、敬遠してたのです)
面白いことに、コンビーフのお茶漬けが大好物だった。
 
当時は珍しい電子レンジ、電気温水器のある生活。
私の為に建ててくれた20畳の離れのワンルーム
毛皮のコート、洋服も靴も高価なものばかり。
話す内容も、まるで別世界。
私は、婚家の家風らしきものに馴染むように努めていた。
 
私は、決して贅沢な性格でもなく、
これが欲しいと強くねだった事などなかった。
が、とにかく環境は一転していた。
お金の使い方を考えずに済む世界があるなんて!
驚くばかりでした。
日々の生活のやりくりに頭を悩ませていた実家の生活、
私のサラリーマン生活、どちらも手持ちのお金をどう使って生き延びるか?
それが、大問題でしたもの。
 
しかしながら、そんな生活は、パートナーのこの言葉で覆された!
「もう、家にはお金が無いよ!」
それまでの人生経験からして、私には到底想像も理解すらも出来ない展開が、この一言で始まろうとしていました!
 
「それじゃ、これからどうするの?」
「そのうち、馬、売れるだろう」
「いつ、売れるの?」
「だから、そのうちにだよ」
涼しげな顔でのコメント。
 
それでは、手持ちのお金も無く、明らかな次の入金の当ても無いのに、
この一年半、私を楽しませるだけに散財してきた?というのでしょうか?
「手元に2,3千円あったら、それはお金が無いとは言わないだろう?
 一銭も無くなった時に初めて無い!と言うんじゃないのか?」
エエーーッ!エエーーッ!
このパートナーの(金銭感覚)
我が人生でこれほどの(衝撃)を受けたことはありませんでした!
 
後に、これを知った友の一人が
「奇人変人の部類に入るね!」
そう言って涙を浮べて笑い転げましたよ。